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仮面ライダー(2) ~おれが仮面ライダー2号だ [仮面ライダー2号]

ウルトラマンも仮面ライダーも、必然性があってシリーズ化したわけでは無い。そのきっかけは、ウルトラマンでは別番組に出ていた“同郷の仲間が窮地を救うためにやってきた”という場面から発想された。
しかしながら仮面ライダーの場合は、撮影中の不慮の事故という思いがけない災難が、いわば逆転の発想で番組の窮地を救っただけでなく、その後の人気を決定的なものにした。知恵を出し合って番組とその関係者を救ったわけだから、プロデューサーやスタッフの心意気に、今更ながら拍手を送らずにはいられない。


★★★★★★★★★★★★
平山亨プロデューサーは、動揺している暇は無かった。急きょ、制作担当の内田所長と打ち合わせを行い、撮影済みフィルムと既存の藤岡氏のフィルムをつないで、どうにか制作中の2本分を作る目算が立った。問題はそのあとである。

早速助監督たちを招集して、藤岡氏が出演しない全編仮面ライダーが活躍する台本を書かせた。そのうちの一つが、(当時)長石多可男助監督のFBI秘密捜査官《滝和也》が活躍する『吸血怪人ゲバコンドル』の話だった。本郷猛のいない『仮面ライダー』の撮影をしながら、こうして都合3本分の話をストックすることが出来たため、当初は吹き替えを立てて、彼の現場復帰を待つという予定を立てた。

ところが藤岡氏の怪我は全治6か月。復帰が待てないことが判り、新しい仮面ライダーを選ぶことが必要になった。近藤正臣氏、千葉次郎氏などの名が挙がったが、どうもシックリこない。内田所長は、『柔道一直線』で一緒だった《佐々木剛》なら、何とかしてくれそうな感じがしたと語っている。

佐々木氏はというと、怪我をした友人から仕事を奪うようでイヤだったことや仕事を引き受けて視聴率が落ちたら洒落にならないとも思ったという。しかし一番の問題は、子供番組で主役をやっていた俳優たちがその印象を払拭しきれずに、その後の仕事で苦しんでいたことを知っていて、それが気にかかっていたという。

しかし藤岡氏と知り合いだったこと、育ててくれた東映に恩返しがしたかったこと、なによりも自分を必要としてくれているという気持ちに応えるべく、《藤岡弘が復帰するまで》という約束で、佐々木氏は仮面ライダー出演を承諾したという。

《一文字隼人》という名前は、仮面ライダーの前身企画である『クロスファイア(十字仮面)』から十字をもじって一文字、精悍な戦士のイメージの薩摩隼人から名を隼人と、平山プロデューサー達が名付けたそうだ。

こうして主役交代を機に、内容を一新することも決まり、本郷ライダーのおどろおどろしいムードから、一文字ライダーは明るく元気なムードにしようということになった。石ノ森章太郎先生のデザインにより、テールのついたクリーム色のつなぎを着た2号ライダーが、ここに誕生した。

一文字ライダーへの交替に際し、変身ポーズも作られることになった。大野剣友会の高橋一俊氏が、撮影のあとサウナに入って、鏡の前で『ああでもない、こうでもない』と試行錯誤して考えたのだそうである。

こうして第14話『魔人サボテグロンの来襲』で、つなぎのファスナーを下げて、『お見せしよう』と言ってポーズを作り変身する。この時、高橋氏に付けてもらった変身ポーズの手順を間違えてしまったのだが、それはそれでカッコよく変身できたので、監督がOKを出したそうだ。よって、この回の変身ポーズとこれより後の変身ポーズが違うのは、単に間違えたというだけの話であるらしい。

佐々木氏は2号ライダーの初話となる『魔人サボテグロンの来襲』の時に、仮面ライダーの着ぐるみに入ってマスクを付けて、アクションを披露している。本来なら藤岡氏の怪我の後だけに、主役が怪我をしないよう絶対に入ってもらいたくないはずなのだが、現場にはそういう話が伝わっていなかったらしい。

大野剣友会とは馴染みだし、藤岡氏がライダーに入ってこなしていたことを知り、負けたくない気持ちがあったそうだ。立ち回りについては事あるごとに剣友会の岡田氏らと話し合い、キチンと意見も言ったという。殺陣師の仕事は、役者に出来る限りカッコイイ殺陣を付けてあげる事。

剣友会の岡田氏が佐々木氏の殺陣を評する。『持って生まれたものなのか、見せ場のある動作を創るのに、よいリズムがあるし綺麗。立ち回りもキレるし、絵作りも上手い。そういう意味で、変身前などこちらのイメージ通りの芝居をやってくれた。好きじゃないと、あそこまで立ち回りはできない』。 岡田氏はべた褒めである。(おわり)


★★★★ ★★★★ ★★★★
佐々木氏と大野剣友会とは『柔道一直線』で馴染みがあり、また佐々木氏自身、新国劇で立ち回り芝居の場数を踏んでいて、殺陣は得意なのであろう。それと持って生まれたものが合わさって、一文字隼人としても、2号ライダーとして着ぐるみに入っても、うまく立ち回れるようである。なによりも“負けたくない”という努力を惜しまない素晴らしい役者魂の持ち主なのである。
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仮面ライダー(3) ~秘密捜査官 滝和也の後ろ回し蹴りがさく裂! [仮面ライダー2号]

佐々木剛氏演じる仮面ライダー2号の演技は、ある意味でクサい芝居をめざしたという。それは『仮面ライダーが子供番組』だからである。どういうことか? 演じる側として、心得ておくべき点があるという。それは見ている対象(つまり子供達)が解りやすいように演じる、ということ。

『驚く』演技をするにしても、普通の芝居より大きく動いて驚きを表現しようと心がけたという。例えば、ショッカー戦闘員が向こうから現れたとする。それをにらみ付けながら、迎え撃つような表情で戦闘の構えをとる。

そして『出たな、ショッカー!』と叫んで、戦闘開始となる。必然としての大げさな芝居をする。だから『クサい』のだそうだ。攻撃を受ける方も、殴られたらもんどりうって、大きく吹っ飛ぶわけである。演技が撮られて映像になった時に、どういうポーズを取ればカッコイイ映像に見えるかといったことにも段々意識するようになり、鏡の前でよく練習したという。

『仮面ライダー』が、アクションというものについて考える基礎になった。子供にも解りやすい芝居、そしてカッコよく見えるポーズ、これが一文字隼人、佐々木剛のひと味違うプロの技なのである。

滝和也こと千葉治郎氏は、佐々木氏が一文字隼人を演じる時には、切っても切れない間柄だ。戦闘員が滝に向かって襲い掛かり、二人三人となぎ倒していく。だが四人目あたりでショッカー戦闘員にやられそうになるところを、仮面ライダーに助けられる。

滝とライダーとの強さの関係を際立たせることが出来る。そうなるように制作スタッフは、ストーリー上の決め事にしていたらしい。千葉治郎氏は千葉真一氏の実弟なので、アクションは何でもできるというイメージが強い。だから大野剣友会も、難しい立ち回りをつけてしまう。

ところが難なくこなしてしまうのである。とにかく足が長く動きがしなやか、アクションのスピードが速い。佐々木氏は当然敵わないので、『治郎チャンと一緒の立ち回りはイヤだった』そうだ。千葉氏は《後ろ回し蹴り》が得意で、これはタイミングよく相手との間合いを見切るのが難しい。

佐々木氏の立ち回りには、残念ながらこのシーンは無い。しかし変身後のライダーなら、大野剣友会の仲間(主に中村文弥氏)がカッコよく立ち回ってくれるので、なんとでもなるというわけ。そうしたわけで、千葉治郎氏が女房役、滝和也を演じてくれたおかげで、佐々木氏の一文字隼人が映えるということになる。

当時の佐々木氏は、あまり台本を覚えてくるということをしていなかったそうだ。大まかなストーリーを頭に叩き込むだけで、セリフを一言一句覚えるようなことはしない。現場に入ってから、シーンに合わせてセリフを頭に入れて、ハイ本番ということだった。

大体はこれで、ことが済んだ。ただ撮影は2本持ちなので、たまに勘違いをして間違えた芝居をしてしまい、監督に怒られたこともあったという。ある時、忙しすぎて台本を読まずに現場に入ってしまい、あわてて千葉治郎氏にメーキャップ室で説明をしてもらったこともあったとか。

役柄ではライダーが滝を助けていたが、現実では滝がライダーを助けてくれていたという笑い話である。その頃、別のある番組に出演していた佐々木氏は、その役柄について悩みぬき、円形脱毛症になってしまっていた。なので、カツラを付けて一文字隼人を演じていた。

ヘルメットをかぶっている一文字隼人は、ワンショットの中でそれを脱ぐシーンは無い。それはヘルメットを脱ぐと、カツラも一緒に脱げてしまうからであった。ひととおり撮影が終わると、最後はアフレコということになる。撮影は2本持ちなので、2話分を一日かけて録音していくことになる。

朝9時ごろに始まって、大体8時間位かかるという。怪人の声は、着ぐるみに口がある訳では無いので、画面で身体をゆすっているだけの怪人に、音響効果担当者が『アフアフアフで、いきましょう』などと指示をだして、声優さんが鳴き声をあてるのである。

仮面ライダーの決め技の名前が、脚本に細かく書かれていることは少ない。だからアフレコ現場で名前を決めて、声をあてるそうだ。シナリオには、『ライダー、投げる』『ライダー、蹴る』位しか書いて無いので、撮影現場で大野剣友会が殺陣を組み立て、立ち回りを撮影する。それをアフレコの時にカッコいい名前を考えて、『ライダー車輪!』などと、佐々木氏が叫ぶという訳である。

一文字ライダーと一緒に変わったモノに、戦闘員のマスクがある。それまでは役者の顔にペイントしていたのだが、手間がかかるし、何度も同じ者が戦闘員として登場出来ない。そこでマスクを被ることで、人数の少ない戦闘員役のやりくりを工夫したのだ。

ライダーのマスクも2号のために新調したのかと思いきや、実はこうもり男の夜間撮影の時に、マスクが暗すぎてよくわからないというクレームがついたそうで、エキスプロに明るい彩色の検討用マスクを準備させていたという。それが丁度、1号との主役交代に間に合ったものだった。

当時は予算が無くて、特撮はできなかった。そこでイントレ(足場)やトランポリンなどを使って、飛ぶ、殴る、蹴るといったライブアクションを考えだしたのである。『金が無いなら、頭を使え』スタッフ皆が知恵を絞って、目一杯動いて作った作品だった。(おわり)


★★★★★★★★★★★★
ウルトラマンやセブンもそうであったように、子供番組だからか、予算は少な目だったようで、その分スタッフは知恵を絞り、色々なことを試みた。その努力の結果が、現在ある特撮番組の流れを作ったのである。

それとは別に、予算の無い関係で、大道具などはスタッフの自前というのも、よくあったようだ。佐々木剛氏はカツラ隠しの為に自前の大きな帽子、藤岡氏の本郷猛の服もほとんど自前、ショッカー使用の黒のセダン車は、内田所長の自前、滝のジープは千葉治郎氏本人の自家用車だ。

またサイクロン号はエンストをよく起こし、修理してもすぐ壊れてオシャカになりかけていたという。でも現場は楽しくて、スタッフは一丸となって良い番組を作ろうと頑張っていた。その気持ちは映像を見れば、十分に伝わってくると思う。
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