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レインボーマン(3) ~あんな悠長な弱点を持つヒーロー、いないんじゃない?(脚本家;伊東恒久氏) [レインボーマン]

今回は、川内康範先生の超人3部作すべての脚本に携わった伊東恒久氏に、その第一弾である『レインボーマン』について語っているところをご紹介します。

伊東氏は1967年『キャプテンウルトラ』が、デビュー作である(鈴木良武氏との共作)。 その後は竜の子プロなどで、アニメの脚本をメインに仕事をしていくことになる。『昆虫物語 みなしごハッチ』を経て、『巨人の星』、『アタックNo.1』など、いわゆるスポ根もののアニメの仕事が続き、72年の『正義を愛する者 月光仮面』で、川内康範氏と出会う。

しかしながら、この『月光仮面』は視聴率的には苦戦して、結果として良い出来ではなかったようだが、この時の仕事ぶりを評価してくれて、『レインボーマン』でふたたび呼んでくれたのではないか、と伊東氏は思っているという。『川内先生は作家として大先輩だし、そういうお付き合いをさせてもらっていました。人脈が広い方だったけど、政治的なことはよくわからないので、一切関わらなかった』とも述べている。

では、伊東恒久氏の話をどうぞ。


聞き手;
「『レインボーマン』は、すでに企画書の段階で、脚本は伊東さんということになってますね」

伊東氏;
「僕は結構最初の段階から関わっていたんですよ。当時、川内先生の事務所がホテルニュージャパンにあったんだけど、そこに別に部屋を取ってもらったんです。当時僕は夜型の生活をしていたので、朝の10時に来てくれと言われると、かなりキツかった。当時もここ(埼玉上尾市)に住んでいたからね。あるとき、先生を2時間位待たせたことがあった。

その時はもう、怒るのを通り越していたらしく、笑ってましたよ(笑) 僕は自宅に電話を入れるのも遅れていて、近所のお宅からかけたり、呼び出しにしてもらったりしていたんです。緊急の時なんか、夜中でも電報が来るんですよ、『電話くれ』ってね。企画書も僕が書いたのかな。川内先生は、政治の方とかもいろいろと忙しいお方だから。

でも(近くに部屋を取ったおかげで)すぐ近くに僕がいるから、ちょっと手の空いたときとか、すぐ打ち合わせが出来る。番組の主旨などは先生が書いてくれたけど、そのほかの細かい設定とかは僕が書いたと思う。もちろん、ふたりで相談しながらだけどね。

聞き手;
「では、月の化身をはじめその他は、伊東さんのアイデアなんですか?」

伊東氏;
「7変化というアイデアは、先生がずっと温めていたみたいだね。『七色仮面(59年)』ってあったでしょう?それが発想の基になっているようだけど、今回は全く違った形でやろうと。それから、太陽の化身はレインボーフラッシュが決め技とか、土の化身は疾風土煙火の術とか、超能力や個性を肉付けしていったわけです。

当時、変身ものが流行っていたことも影響していると思いますね。川内先生は違う人と会っている時も、アイデアが浮かぶとボクを呼ぶんですよ。『こういうの、どうかな?』ってね。最初の1クール分ぐらいのお話は、準備稿みたいな形でふたりでパーッと創っちゃった。制作が正式に決まってから、それをもう一度練り直したんですよ。

やはりキャストとかいろいろな要素が入ると、変わってしまう部分があるからね。番組がスタートしてからも、週の半分くらいは都内に泊まり込んでたんじゃなかったかな」

聞き手;
「ホテルニュージャパンにですか?」

伊東氏;
「いや。その頃は東宝の野口さんというプロデューサーが取ってくれたホテルや旅館。祖師谷大蔵に、よく映画関係者が使っていた旅館があったんだけど、そこも使ったことありますよ。作品が終わるまで、そんな生活だったね。たまに家に帰るときも、野口さんが一緒に付いて来たりね(笑) そのまま泊まったりしたこともあった。

ホント、どっぷりと浸かってましたよ。あの時は、この作品しかやってないんじゃないかなぁ。こんな生活してたら、他の作品はやれないよね(笑)」

聞き手;
「シナリオの執筆作業は、どのように進められていたんですか?」

伊東氏;
「僕と先生とで、1クール分ぐらいのプロットを創って、『じゃあ、これでいこう』というものが出来ると、それを僕とプロデューサーとで持ち返ってね、どのようにエピソードを分割するかを決めて、ライターに割り振っていくというのが大まかな流れだったな。

番組が軌道に乗ると、川内先生はある方向性だけを決めて、あとは任せてくれましたけどね。何か問題が起こったら俺が引き受けるから、とにかく君は、面白いものを書くことだけ考えればいいって」

聞き手;
「当時、1クール単位でストーリーを進めるという形は、珍しかったと思いますが」

伊東氏;
「やはり、テーマというものが第一にあったからでしょう。経済が戦争を起こすんだ、とかね。僕らもそう言われてはじめて、『そういうことか』と分かった所もあった」

聞き手;
「そういう視点を、はじめて子供番組に持ち込んだわけですね」

聞き手;
「おそらく、一般のドラマでもやってないんじゃないかな」   (づづく)

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レインボーマン(4) ~あんな悠長な弱点を持つヒーロー、いないんじゃない?(脚本家;伊東恒久氏) [レインボーマン]

(前回からのつづき)
聞き手;
「この番組を見て、物価高騰ということがどういう仕組みで起こるか、わかったという記憶があります」

伊東氏;
「そうなんだよね。インフレが起こる仕組みなんかをドラマの形でやっていたわけでしょう。昨日は千円で買えた物が今日は五千円じゃなきゃ買えないとかね。子供番組だから誇張して描いてはいますけど、その根本にあるのは大人社会の論理、経済原理ですよ。

それを見せていくには、やはり1話完結では無理なんだ。こういう原因があって、こういうことが起こる。主人公の目を通して、庶民の生活がどう変わっていくのかということを物語として描くには、1話完結じゃ無理なんですよ」

聞き手;
「『レインボーマン』というと、アンパンが2個で千円になるというシーンが、忘れられないんですよ。千円なんて当時の僕らには、夢のような金額でしたから」

伊東氏;
「(笑)そういうことなんですよ。当時アンパンなんて、1個数十円とかでしょ。ほら、インフレなんて言うと難しいけど、そういうことなんだってやれば、分かり易いじゃない?子供だけじゃなくてね、子供と一緒に見ている大人も、一緒に考えてくれればいいなと思っていた」

聞き手;
「ところで、登場する怪人は、どなたが考案されていたのでしょうか?」

伊東氏;
「基本的にはボクだね。シナリオの段階で、『大体こんな感じ』というものを考えてはいるんだけれど、製作が進むとデザインも間に合わない。だからプロデューサーと二人で高架下にある西銀座デパートへ行って、そこで売っていたお面を買ってきて、ちょっと細工して使うなどの工夫もしてましたよ。

予算の関係もあって、全身着ぐるみというのは無理だったからね。でもそういう形で統一したから、それはそれで味が出たんじゃないかな」

聞き手;
「この番組の魅力でもある7つの化身というのは、書く方からすると、どこでどう登場させるかとか、配分とか、ご苦労されたと思うのですが?」

伊東氏;
「その辺は上手く割り振っていたつもりですよ。前回は火、水だったから、次は木、金を出してくれとかね。それはライターにお願いしていました。だんだん向こうもコツが判ってきたというか、こっちが言わなくても出してくれるようになりました」

聞き手;
「調べてみると、割と土の化身の出番が多いんですよね」

伊東氏;
「やってることは地味だけどね。ほら、ヨガの眠りが近づくと、どうしてもどこかに逃げて隠れたりしなきゃならないから、それで出番が多くなったのかもしれない。あのヨガの眠りという設定も、ユニークだよね。こういうヒーローものの場合、超能力以上に弱点というものを上手く創らないといけないんだよ。ウルトラマンだって、そうでしょ?」

聞き手;
「寝てしまうというのが、斬新でしたよね」

伊東氏;
「エネルギーを充てんするという意味では、理屈の合っていたと思うけどね」

聞き手;
「5時間という時間も、非常に微妙で」

伊東氏;
「そうそう。あんな悠長な弱点を持ったヒーローもいないんじゃない?(笑)」

聞き手;
「そのたびに、真っ白く塗られる水谷(邦久)さんもたいへんだったと思いますけど」

伊東氏;
「あればかりは、流用が利かないからね。だから、さすがに毎回は出来なかった」

聞き手;
「あと、レインボーマンが大臣に直訴に行くという場面も、鮮烈でした」

伊東氏;
「あの辺はやはり、川内先生の生き方が現れていると思う。『憂国(*1)の士』みたいなとこがあるでしょう?しかも、在野(*2)から物を言うから、強いんだ。『俺は無頼の一介の浪人だから』と」
(*1)ゆうこく;国家の危機を心配すること
(*2)ざいや;官職ではなく、民間の立場にいること

聞き手;
「人々の暴動を前にして、レインボーマンが全く無力だというのが凄いと思うんです。普通なら、何か凄い力を見せたりしそうなものですが」

伊東氏;
「その辺が難しいところなんだ。ヒーローなんだから力を見せればいいじゃないかと思うけど、その頃考えていたことはね、それじゃ人間がダメになると。神様みたいな力で弱っている人を助けるということが、果たしていいのかどうか。それは、ただの対処療法にすぎないでしょう。

最近のNGOも昔と違って、貧しい人に施しをするだけじゃダメなんだという考え方に、変わってきている。最終的に、その人達が自立することが目的だから、それが出来るようになるまで、面倒をみるというふうにね」


聞き手;
「その通りだと思いますね。それをヒーロー番組の中でやったのが凄いところだと思うんです」

伊東氏;
「大人のドラマじゃ出来なかったと思う。子供番組だから、出来たんですよ。何でも神様が解決してくれるというのは、逆に言えば人間をないがしろにすることでしょう?だからね、あくまでも人間本位にしないと。確かにここで描いているのは、あんぱん2個千円という誇張された世界ですよ。

でも超越した力ですべてを解決するんじゃ無くて、人々が何で苦しんでいるのかということを、見極めないとダメなんじゃないかと思う。この作品では、死ね死ね団という悪にその原因を集約させて描いてはいるけど、『そこに象徴される原因を、どう排除していくのか?』ということを常に考えていかないとね。

何でもかんでも『神様、お願い!』では、勇気をもって物事に立ち向かうという発想が生まれないじゃない。こういうことができたのは、やはり川内先生というカリスマ的原作者がいたからでしょうね。他の番組なら、いろいろな意見が入ってきて、こうはいかなかったと思う」    (おわり)


★★★★★★★★★★★★
レインボーマンの後半で、その本体であるダッシュ7の力を強化するために、合体の術(レインボークロス)を体得するが、この術のおかげでダッシュ1~6までの化身単体に変身することが無くなってしまい、画としてはつまらないものになったように思う。
複数のサイボーグと戦うための手段として、複数の化身の力をダッシュ7が身に付けることが出来る術なわけだが、その術の欠点も創るべきだったと思う。合体の術は3分間しか持たないとか、ヨガの眠りが1時間増えるとか、新たに弱点を創ることで、死ね死ね団との戦いがより厳しいものとなったに違いない。

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