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仮面ライダー(1) ~ふたりのおやっさん、安らかに [ライダー座談会]

仮面ライダーを語るとき欠かせない存在といえば、もちろん『おやっさん』である。初代の小林昭二氏(96年8月他界)、二代目の塚本信夫氏(96年10月他界)のおふたり。おふたりとも、ほとんど同じ時期に天国へ召されている。

語らなくても居るだけで安心できる、そんな存在だった「おやっさん」という役柄。偶然だろうか、おふたりとも円谷作品において怪獣と戦うチームの隊長を任されている。いや、これは偶然ではない。やはり存在感・安心感・リーダーの条件を備えた人物として、ピッタリなおふたりなのだ。

元東映のプロデューサーで、残念ながらこちらも他界された平山亨氏が、生前このお二人の思い出を語っておられるので、ご紹介したい。小林・塚本両氏が他界された時期、この平山氏は大きく体調を崩しており、お二人の葬儀にも参列できなかったそうだ。

三人ともほぼ同年齢、自分が先に逝ってもおかしくないのにと、平山氏はそのショックの様子を『両翼をもがれた鳥のよう』と表現している。
では、平山氏の語るおふたりの思い出をどうぞ。


小林さんと塚本さんの今度の訃報は、ほぼ同年ということもあって、頼りにしてきたおふたりが立て続けに逝ってしまわれたことが、自分の体調不調もあってひどくこたえた。

小林さん、塚本さんという『仮面ライダーのおやっさん』を語らずに仮面ライダーは語れないと、私は言ってきた。実際、歴代仮面ライダーの育ての親は、このおふたりだったのだ。

もちろん、役の上の親父さんとして若い彼らを育てる役だったが、人間として役者としての在り方についても、人生の先輩・役者の先輩として、いつのまにか薫陶を与えてくれていたのだそうだ。

藤岡君、佐々木君、宮内君をはじめとして、歴代ライダーを演じた諸君は、尊敬に値する先輩の指導を受けることができたことは、本当に幸せだったと思うのだ。

我々は、本当に貴重な人を失ってしまった。我々は企画を立てるとき、意識的にも・無意識的にも、小林さん・塚本さんのような人を頼りにして、事を進めている。

『こういう役だったらこの人に任せれば安心だ』という人がいることは、不確定要素の多い企画の仕事の大きな部分で安心できるので、その分、他の不確定部分に全力を注げるという訳だ。

ドラマの出演者の構造は、大昔の芝居から決まっているのだ。特に不思議なのは、『老け役』の存在だ。役者のスター性という面から考えれば、登場人物は全員若い美男美女にすればよいと思うかもしれない。何故かそれは一時の花とはなっても、芝居として成功した例は無い。

若い者が演じてでも、『老け役』は必ず要るのだ。語らずとも人生を感じさせる重大な役割を果たしてくれるのが、『老け役』なのだ。

こう語ってくると、仮面ライダーの中でおやっさんの果たした文芸面での重要さが判ってくるのだ。子供対象のこの番組で人生を語るなんて大それた事はしてはいけないタブーみたいなものだが、小林さん・塚本さんのように居てくれるだけでも存在感を感じさせる名優が演じてくれると、彼らの背後にこんな事件に巻き込まれてしまった大人の男の切なさが感じられるのだ。

大体、立花藤兵衛氏、谷源次郎氏の過去がただの平穏無事なサラリーマンだったら、悪の組織が起こす様々な事態にあんな風に対応していられないだろうと感じさせてくれるのが、このおふたりの名優の力であり、それが、奇怪なこの物語に大変なリアリティをもたらして、あの大成功に導いてくれたのだ。

『(新)仮面ライダー』に入るとき、私は小林さんがいないと仮面ライダーじゃないと思い込み、当然小林さんは出てくれると信じ切って企画を立てた。ところが当然OKだと思っていたマネージャーの答えは、何と『ノー』だった。まいったなぁ、何がいけないんだろう。

すでにやりたい番組があるのならそちら優先で良いから、すこしだけでもとお願いしたが、そういう理由でもないらしい。ギャラが少ないというのなら、出来るだけのことをするからと粘ってお願いしたが、ギャラの問題ではなく出ない意志は固いのだそうだ。

そうかといって、私もこんな大事な問題をノメノメ引き引き下がるわけにはいかない。こういう場合、直接交渉してはマネージャーの存在を無視することになって申し訳ないが、小林さんに会わせてくれるよう頼んだ。マネージャーも事の重大性が判るから、小林さんに取り次いでくれた。

忘れもしない渋谷の○○ホテルのロビーでの会見。『ヒラさん、忙しいのに済まない。』と、気遣いの第一声、やさしい人なんだよ。小林さんは劇団の中でも、まとめ役だったんだそうだ。俳優という人種はわがままな人が多くて、そういう人が集まると、まとまるモノもまとまらない。

それなのに数々の名作傑作を産み続けてこられた影には、小林さんのまとめ役の功績があったというものだ。プロデューサーとしても、小林さんのような人が芯にどっしりと構えてくれると安心なのだ。

『キャプテンウルトラ』の放送直前のキャンペーンで、TBSホールだったと思うが、楽屋で『ウルトラマン』の科学特捜隊の若い人達の中に小林さんがいた。先輩風を吹かせること無く若い人に説き教える姿を見て、『ああ、この人はただ役の上での隊長だけでなく、皆をまとめて番組の成功に貢献している。

名実ともに隊長のような人なんだなぁ』と、その人柄に惚れこんでしまった。『仮面ライダー』はそんな小林さんがいたからこそ、できたのだと思っている。

〇〇ホテルでの会話。小林さんは辛そうに言った。
小林;
『済まないけど、俺のわがままなんだよ。こんなにまで言って、俺を使ってくれるヒラさんに申し訳ないんだけど。また本当は役者は自分の能力を認めてくれる人に対して、断るなんてやっちゃいけない事。とんでもない不遜なことだと判っているんだけど、今度だけはわがまま言わせてよ』

平山;
『と、言われても、仮面ライダーは小林さん無しには成り立たないって、世間みんなが思っていることも判ってよ』

小林;
『弱ったなぁ。(途中省略)言わなきゃダメかなぁ』

平山;
『聞かなくちゃ、判らないもの。(途中省略)・・帰れない』

小林;
『じゃあ、言うよ。役者ってのは贅沢なもんでね、同じ役で何年もやってると仲間内から言われるような気がするのよ。あいつまだ立花藤兵衛やってるの?他の役、できないんじゃない?って。だから藤兵衛から離れて、俺にだって別の役やれるんだぞって言いたいわけさ』

これには堪えたなあ。役者として新しい役に挑戦して、前進したいというチャレンジ精神に感激してしまった。ここでわが仮面ライダーが本当にかわいいなら、プロデューサーのわがままで、立花藤兵衛をやってくれというべきだったのかもしれない。相手の心情に感激したなんて、未熟というべきか、無能というべきか・・・。

平山;
『仕方がない。あなたを諦める代わりに、あなたの代わりが出来る俳優さんを推薦してよ』

小林;
『俳優仲間の面倒見も含めて、塚本信夫さんなら俺よりいいよ』

蛇の道は蛇というが、名優は名優を知る。塚本さんは小林さんに勝るとも劣らぬ名優だ。あとになって知ったことだったが、小林さんも塚本さんも、あの大ヒット番組ウルトラシリーズの隊長だったのだ。

不思議なご縁で、名優のおふたりにお世話になることができた。何歳になっても前進を志していた小林さんは、前進を続けつつ逝った。塚本さんは新しい芝居のけいこ中に倒れて、そのまま逝かれたのだそうだ。それにしても、すばらしい方々を失ってしまった。仮面ライダーのふたりのおやっさん、安らかに。
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