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『人造人間キカイダー』をより深く語ろう会(第1回) [キカイダー座談会]

『人造人間キカイダー』の大ファンだという精神科医のA氏と出版社社長(当時)のB氏が、石ノ森キャラクターの中でも異色のキャラであるキカイダーについて、その魅力を語る。

司会;
「Aさんは、石ノ森ヒーローの中のマイベストは、どれですか?」

A氏;
「まぁね、キカイダーかハカイダーですね。自分の中で、いつも争ってます」

司会;
「どんなところが魅力ですか?」

A氏;
「キカイダーっていう作品は実写でみたんですけど、良心回路ですよね。不完全な良心回路を持っているという、ガラスのような心をもって戦うキカイダーが切ないんですよ」

司会;
「Bさんも、このキカイダーは大好きということですが」

B氏;
「ちょうど中学二年生の時に、特撮の方をみたんですけどもね。ちょうど思春期じゃないですか、キカイダー自体が思春期を表しているキャラクターだと思うんで、その辺を語りたいなと思っています」

(この座談会の前に、キカイダー第37話「ジローの弟 強敵ハカイダー」を観賞している)
司会;
「Aさん、久しぶりに観たキカイダー、どうでした?」

A氏;
「引っ張りますねー。表題がハカイダーでしょ。最後に出てくる(笑)。これ、思い出しました、ハカイダーってスゴイってことが、当時中学の中でうわさで流れたんですよ。いきなり同じ仲間の戦闘員を撃っちゃうでしょ、あれが凄いですね。

あれは明らかに演出でしょ、他のいわゆる、ただ従順なだけのそれまでの悪役ロボットとは一線を画している、自分の意志を持っているっていうね、悪の中のの悪って感じがスゴイじゃないですか!」

司会;
「登場した時から、何か予感をさせてくれますよね」

A氏;
「コイツはただもんじゃないって、感じですよね」

司会;
「Aさんは精神科医でもあるんですけども、今のお仕事の立場からご覧になっても、キカイダーとかハカイダーというキャラクターは、大変面白いんじゃないですか?」

A氏;
「面白いですね。まさに先程Bさんが思春期って言われたんですけども、すべてが葛藤のさなかになって、人間の存在そのものを象徴としてロボットの中に込めたという感じがして、インスピレーションを与えてくれますよね」

アシスタント;
「初めて観たんですけども、名前がわかりやすいですね」

B氏;
「あははは。あの名前が決まるまでは、結構長くてですね。企画段階では『人造人間レッドブルー』という名前だったんですね。見たまんまですね(笑)。青が知性で、赤がパッション(情熱)を表しているんですけど、ある意味、青と赤が、善と悪を表してもいるんですね。

企画が進んで行ってもなかなか名前が決まらなくって、ギリギリになってキカイダーに決まったんです。『仮面ライダー』がヒットしたんで、「ダー」を残そうということで、決まったらしいですよ」

司会;
「ああ、確かにこの作品は『仮面ライダー』の翌年の作品なんですよね」

B氏;
「キカイダーの「キカイ」は、マシンのキカイでもあるんですが、奇怪、怪しいのキカイでもあるんです。二つの意味があって、そこが巧みなところなんですね」

司会;
「石ノ森さんのSF作品は、今観ても先見性があったなぁと、思いますよね」

B氏;
「敵方が動物を形どったロボット、アンドロイドなんですね。仮面ライダーの怪人は、明らかに人間を想像するフォルムなんですけど、これは1年後の企画ということで、デザインの段階から、できるだけ人間を残さないフォルムにしようということなんですね」

司会;
「私はキカイダーといえば、当時、左右非対称な、そして一部が今でいうスケルトンのデザインが、非常にインパクトがあったと思うんですけど」

B氏;
「テレビ雑誌の写真でそれを見たときに、カッコイイと思ったんですよね。あのグロテスクなところがね、石ノ森デザインの最高傑作だと思うんです。もうビジュアルだけで、この作品のテーマを表しているんですよね。

善と悪とか、人間の葛藤とかね。あと身体が不完全なところは、人間の成長途中の部分であるとかが一目でわかる、素晴らしいデザインです」

A氏;
「大きく見てもね、いわゆるヒーローは完全であるということじゃないですか。完全ということは左右対称であることなんですね、ふつうは。神に近いというのは、左右対称ですから。それが完全な非対称で、しかもヒーローっていうのは、ここから始まったんじゃないのかと。

このあとですよね、右肩だけにマシンガンが付いてるとか、非対称な形が出てくるじゃないですか。キカイダー以前で左右非対称でヒーローだというのは、無かったと思うんです」

B氏;
「無かったと思いますね。生前の石ノ森先生にお会いした時に、キカイダーが大好きですという話をさせていただいて。キカイダーの完成形って(左右)真っ青になるはずですよね。全部が知性の青色で覆われている状態ですよねって訊いたところ、「そうだ」と答えられて。

将来リメイクしたいと思って、先生に言ったんですけど。デジタル技術が進んで、今の技術なら、変身したら一度すべて青色になって、(ギルの笛で)完全に成りきれなくて半分赤色に変わっていくような描写が、できるんじゃないかなと思って」

A氏;
「なるほど、なるほど」  (つづく)

★★★★★★★★★★★★
この対談は今から7年程前に行われたものだが、2014年にキカイダーはリメイクを遂に果たした。この映画でB氏が話したような描写になっているかどうか、筆者は映画を観てないのでわからない。ちなみに、この『キカイダーリブート』はB氏の強い後押しにより、実現したということだそうだ。

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『人造人間キカイダー』をより深く語ろう会(第2回) [キカイダー座談会]

『人造人間キカイダー』の大ファンだという精神科医のA氏と出版社社長(当時)のB氏が、石ノ森キャラクターの中でも異色のキャラであるキカイダーについて、その魅力を語る。

★★★★★★★★★★★★
(前回から続き)
司会;
「今から見ると、変身シーンは相当工夫していますね、空港の案内板みたいにパタパタパタと・・・。あの当時は、どうやって変身シーンを演出しようかと工夫したんでしょうけどね。

ところで、このキカイダーのデザインは、当時左右対称でカッコイイのが当たり前というヒーローの中にあって、これをぶつけていくという石ノ森さんのデザインセンスですよね」

B氏;
「ちょうど『キカイダー』は、『仮面ライダー』を放送した後の枠なんですね。夜8時台にやった番組なんで、ライダーよりもちょっと大人っぽくしようという製作者の意図があったわけです。ですから、心の問題とかデザインの問題も、その辺に反映しているように思いますね」

司会;
「良心回路という設定が、また物語に深みを与えていますね」

A氏;
「名前がジェミニっていうんですね。ふたつに分裂していることが、基本に置かれているというかね。良心回路という、人間が正しく生きるための心と同じものが、不完全であると。でも良心とはね、逆に言うと不完全だからこそ、それが本質だとも言えるわけなんですよ。

中学1年の時は、これが何の意味だかよくわからなかったんだけど、これは非常に深い存在の根本を問うているような気がしますね」

司会;
「それから、ギルの笛によって操られる。これって、我々の良心も誘惑によっては動かされてしまうことを、象徴していますよね」

A氏;
「ギルの笛が鳴ると、キカイダーは困るんじゃないんですよね。完全に悪に染まって、自分の力を100パーセント出して物を破壊しようとする。でも人間の本質って、そういうところがあるじゃないですか。

自分がわがまま勝手にやろうと思ったら、物事を破壊して自分の好きなようにすると。逆にいうと、ダークサイドの魂を開放するような笛でもあるんですよね。まさに誘惑の笛ですよね」

B氏;
「それを理性がね、一所懸命抑え込むから苦しんでいるわけですよね、ジローは。あの毎回の苦しみ方がたまらないわけですよね」  (つづく)


★★★★★★★★★★★★
この対談を観ていたら、映画になった『キカイダー・リブート』が見たくなってきた。近いうちにテレビで放送してくれるといいのだが(笑) このキカイダーのように、昭和のヒーローがリメイクされて平成に甦る(よみがえる)というのは、非常にうれしいことだ。

『電人ザボーガー』も、平成に映画リメイクされた作品のひとつだ。大人になってもヒーローに憧れるのは、子供じみたことだと言う人もいるが、大人のためのヒーロー番組があってもいいだろう。

子供の時にみたヒーロー番組で、平成の世になっても語り継がれているモノは、どの作品を取ってみても、製作スタッフ陣が「単なる子供向けに作っていない」作品ばかりだ。いつまでも面白い番組は、子供番組扱いせず、誤魔化すことをしないという製作スタッフたちの思いが込められている。

そのことを、大人になった僕たちが感じ取れるから、いつまでも面白いのだ。原作者はもちろん、それを良い番組に仕上げてくれた、脚本家と製作スタッフの皆さん、本当にありがとうございました。

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『人造人間キカイダー』をより深く語ろう会(第3回) [キカイダー座談会]

『人造人間キカイダー』の大ファンだという精神科医のA氏と出版社社長(当時)のB氏が、石ノ森キャラクターの中でも異色のキャラであるキカイダーについて、その魅力を語る。

★★★★★★★★★★★★
《第42話 変身不能!?ハカイダー大反逆!》を観賞した後に、座談会が再会する)
司会;
「飯塚さんの声がまた迫力があって、ハカイダーの魅力につながっているような感じはありますよね。ハカイダーのキャラクターについては、どう思いますか?」

A氏;
「今観たら、ドラ息子ですよね。ダークっていう世界を制覇しようという大目標のある組織の中で、本当に親の言うことをきかない、唯一のはねっ返り息子っていう感じですね」

司会;
「誕生から最後まで、ハカイダーはほとんどダークのためには仕事してないんじゃないかという(笑)、我を通しますよね!」

A氏;
「我を通しますよねぇ。それがね、当時ボクは中学生だったんですけど、それに共感したんですよ。自分は何でこんなバカなんだ、親の教育が悪かったんじゃないのかとかね、思春期で女の子にもてなかったりすると、何で自分は生まれてきたんだとかね、

全部人のせいにしたがることがあるじゃないですか、思春期って。そういうものが出てますよね、ハカイダーの言動の中に。最後は、「何故ここに自分は存在するんだ」とかね。ニーチェとかのちょっと小難しい本を読むのって、中学時代だったりするんですよね」

B氏;
「自分は何だろうって、思い始めたりするんですよ」

A氏;
「男の子が『俺は醜い』って思い始めるのって、大体ローティーンの頃なんですよ。女の子はどんどん綺麗になって行くでしょ。男はヒゲが生えたりにおいが臭くなったりして。そうすると俺は醜いって、あれがハカイダーですよね」

司会;
「ハカイダーのあのキャラクターがあることで、キカイダーという作品がまたひとつ際立ったってことはありますよね」

B氏;
「そうですね。より深くなったというか、アンチヒーローというか、自分と相対する者の存在ですよね。あとハカイダーのデザインが凄いと思うんですけど、完全に泣き顔なんですよね。実はキカイダーも、よく見ると泣き顔なんですよね。

キカイダーもハカイダーも、目の下に筋がありますけど、あれは涙を表してるんじゃないかと。お互いに泣きながら、駄々っ子同士が戦ってるみたいなところがあるっていうかね」

A氏;
「求めあいながら反発しあってるっていうかね、両方とも孤独ですよね。孤独の陰が、ものすごく強い」

アシスタント;
「私も観ていて、切ない気持ちになりました」

司会;
「(ハカイダーが)目標を見失って、『俺は何の為に生まれてきたんだ』っていう、面白く感じつつも一方で、悲しみみたいなものが伝わってくるんですね」

B氏;
「最後は、お前(キカイダー)に殺されたかったっていう、いつの間にか友情になっているのが良かったですね(笑)」

A氏;
「どこにも所属できない、思春期の男の子の叫びみたいなものがね、モロ被っている感じがしますね」

司会;
「スーツアクターの方と、ハカイダーの飯塚さんの声というところで、芝居のうまさというか、キッチリみせてくれている感じはしますね」

B氏;
「サブロー役の真山譲次さんって方は、柔道一直線のライバル役などにも出ていた方で、当時の青春ドラマによく出ていた方なんですよ」

A氏;
「アクションも、また独特でしょ。仮面ライダーを意識して、差別化しようとしたんですかね」

B氏;
「明らかにアクションの形が違いますよね」

A氏;
「すごいシュールっていうかね、仮面ライダーの場合は人間同士の格闘っていう感じがしたんですけども、これは機械の特徴をすごくデフォルメしてね、クリシエ(*)っていうんですけど、象徴して演技してる感じがするんですね。

ぶつかった時の音も全部金属音で、カーンとかキーンとか。それだけじゃ無くて、動き自体を何か機械的な要素を入れて、それが返ってすごくカッコ良かったんですよね」
(*)決まり文句、ありきたりの手法の意味だが、どういう意味で使ったか不明    (つづく)


★★★★★★★★★★★★
第42話は最終回のひとつ前なので、物語は最高の盛り上がりを見せる。ハカイダーは目標を失い、自分のライバルを倒したロボットを見事に倒すが、心の中は空洞状態。キカイダーを倒したロボットを倒したのだから、最高の喜びのはずなのに、

事実はキカイダーを先に倒された憎しみと自分が倒せなかった悲しみに、打ちひしがれていた。そんな自分の存在に疑問を持ち、自分を作った存在を恨むようになる。

悪魔回路という邪悪な心を持つ割には、人間的な苦しみを持っているハカイダー。悪魔回路といえども、いろいろな場面を経験し学習することで、人間の心に近づいていくのだろうか。

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