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『人造人間キカイダー』をより深く語ろう会(第4回) [キカイダー座談会]

『人造人間キカイダー』の大ファンだという精神科医のA氏と出版社社長(当時)のB氏が、石ノ森キャラクターの中でも異色のキャラであるキカイダーについて、その魅力を語る。

★★★★★★★★★★★★
(前回の座談会のあと、実写版キカイダーの原点である漫画のキカイダーのストーリーを紹介してから、座談会は再開する)

《物語は、弟にピノキオの物語を読んで聞かせるミツ子の挿絵ではじまる》
星の女神さまは、ピノキオにいう。
『良い子でいたら、そのうち本当の人間の子供にしてあげますからね』

光明寺博士の長男イチローは、正義感の強い自然警備隊員だったが、公害をまき散らす大企業を糾弾しようとした矢先、何者かに殺されてしまった。光明寺博士は、絶対に殺されることの無いロボットの自然警備隊員を造ることを決心し、13体の昆虫や動物に似せたロボットを造った。

しかし、資金援助をしているギルが「悪の組織シャドウ」のボスで、ロボットを戦闘用に使おうとするたくらみを知り、博士は良心回路を埋め込んだキカイダーを密かに造った。しかしギルは光明寺の裏切りを知り、完成直前に研究所を破壊、光明寺博士は行方不明になる。

(途中省略) 研究所破壊の中で奇跡的に生まれたジローは良心回路が不完全なまま、ミツ子と共に光明寺博士探しの旅に出る。ジローは襲い来る13体の兄弟たちを次々と倒しながらも、自分が機械であり不完全であることに悩み、嫌悪する。

(途中省略) 光明寺博士がジローの次に造ったロボットのハカイダーが、ジローの前に出現する。しかもハカイダーの脳には、光明寺博士の脳が移植されていた。ハカイダーとの戦いで、ジローは何度も大ピンチに陥る。そんなジローのもとへ、仲間のゼロワンやダブルオーが集まってきた。

だが、彼らはハカイダーに捕らえられ、服従回路を埋め込まれてハカイダーの手先になってしまう。ジローにも服従回路が埋め込まれるが、良心回路があるためにハカイダーには服従せず、ジローが取った行動は、仲間たちを壊すことだった。

これで俺は、人間と同じになった。だがそれと引き替えに、これから永久に“悪”と“良心”の心の戦いに苦しめられるだろう』 最強の敵ハカイダーも倒され、悪の組織は全滅した。だがピノキオ(キカイダー)は人間になって、本当に幸せになれたのだろうか?・・・(完)


★★★★★★★★★★★★
司会;
「Aさん、テレビのキカイダーも子供向けの特撮番組としては深いんだけれども、漫画版はさらに深いような気がしますね」

A氏;
「ボクね、最近読み返してみたんですけれども、全6巻ですよね、確かね。10巻くらいの内容が入ってますよね、中にね。目まぐるしく立場が変わっていくわけですよ。例えばハカイダーの中に埋め込まれている光明寺博士の脳が、途中でギルの脳になったりすると。

それによって、微妙にハカイダーの性格が変わっていったりね。でもハカイダーはギルそのものでもないし、光明寺そのものでもないんですよ。その描き方が絶妙っていうかね、天才だなって思いましたよね」

司会;
「最終回にかけての、ある意味救いようのないストーリー展開っていうのは、見ている側にはとても衝撃的ですよね」

A氏;
「そうですよね。これは石ノ森作品のヒーローものに言えることなんですけど、一番初めから宿命づけられてると思うんですよね。例えば仮面ライダーにしてもキカイダーにしても、009(ゼロゼロナイン)にしてもね、彼が生まれた研究室はね、悪の秘密結社の研究室なんですよ。

すべてが世界を征服し人々を隷属させようとする、そこから生まれた。だから彼がどれだけ正義の為に戦っても、自分は悪の手先として作られたことをいつも感じ、戦う相手は、要するに兄弟なんですよね。

全部兄弟を倒していかなければならないと。これって神話的と言っていいくらい、非常に暗い、でも本質的な問題を抱えていますよね」

司会;
「Bさん、漫画の作品として見たときに、このキカイダーはどういうところが優れた作品だと思いますか」

B氏;
「そうですね、当時連載で読んでおりましたが、ラストシーンに向かってね、このシーン(キカイダーが、仲間のゼロワン、ダブルオー、ビジンダーをレザー光線で破壊するシーン)が圧倒的に衝撃なシーンでしたね。

当時友達と一緒に読んでおりましてね、自分の兄妹たちを自らのブラスターで殺してしまうんですが、今までのパターンなら、ヒーローだから、一度壊れてもまた甦ってくると思うじゃないですか。翌週最終回で、殺したままだってことが分った時の驚きたるや、凄かったですね」

A氏;
「しかもこのあと、残骸が、首が飛んでいたり、目が外れていたりする残骸までも克明に描いているんですよ、石ノ森さんは。確信犯ですよね」

B氏;
「あとね、ジェミニっていう不完全な良心回路を持っていたキカイダーの方が、より人間らしいと思うじゃないですか。あとで服従回路を埋め込まれたことで、仲間同士で平気で殺し合って傷つくこともないことは、より人間に近づいてしまったと。

人間に近づくことは、ほんとにロボットにとって幸せなんだろうか?という、逆説的に問いかけてくる何かがあるような気がしますね」

司会;
「それまで悪の命令に対して、良心回路のおかげで悩んでいたところが、服従回路が入ったことによって、これは必要悪だと割り切ってしまえる・・・」

B氏;
「そう、悩まなくなっちゃうんですよね」

A氏;
「割り切り回路ですよね」

B氏;
「1巻の冒頭でこういうシーンがあるんですよね、読んでいて人間不信になるんですけど、ミツ子さんたちのお母さんが、ギルによって送りこまれたスパイなわけですよ。光明寺博士の二人目の奥さん。イチローの母親は死んじゃって、二人目の奥さんがミツ子とマサルを生むんですけど。

今まで正義の側のお母さんが実は悪だったというアイロニー(*)があって、それがサラッと語られているという、この恐ろしさね」
(*)アイロニー;皮肉、反語

司会;
「単純に正義の味方が、無条件に正義を訴えているんじゃ無くて、いろんな悩みだとか葛藤を抱えざるをえないような状況を作り込んで行く・・・」

B氏;
「しかも読者に投げかけて、読者に考えさせるところが、石ノ森さんのいいところだと思います」

A氏;
「こうだっていう、道徳とかお説教が無いんですよね。まるのまま投げられて、極端にいうと、僕たちはそれをずぅーっと抱えながら生きなければいけないような所がありますよね」

B氏;
「おかげで、ずぅーっとトラウマになって残ってしまったりしますけど、それがある種、我々の成長になるのかもしれませんね」 (おわり)


★★★★★★★★★★★★
どうでしたか、なかなか深い内容だったでしょう。漫画版キカイダー、ぜひ読んでみたい作品ですね。単なる(失礼!)漫画なのに、これだけ語ることができるなんて、漫画キカイダー恐るべし!今更ながら石ノ森先生は天才だった!全6巻か・・・だれかボクに買ってちょんまげ!!
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